他人を批判することは一時的には楽しいかもしれませんが、実はリスクも伴います。
例えば、誰かの批判を楽しんでいた人たちも
「もしかしたら、この人は他の場所で自分の悪口を言っているのでは?」と
不信感を抱くことがあります。
他人に疑われずに悪口を言うためには、確かな根拠や人間関係の見極めなど、多大な努力が求められます。
悪口のメリットとデメリットを考慮すると、悪口は得策ではないことが多いですが、それでも簡単に悪口を言ってしまう人がいます。
本記事では、そうした人たちの心理について解説します。
劣等感の補填
他人を批判することで、自分が相手よりも「優位に立っている」と感じられます。
そのため、劣等感が強い人は、自分を安心させるために他人の悪口を言いやすいのです。
「劣等感」という言葉を初めて使ったのはジグムント・フロイトですが、アルフレッド・アドラーは、多くの神経症がこの劣等感を過剰に補うことから起きると指摘しています。
恐怖への反動形成
劣等感がそれほど強くない人でも、何かに対して恐怖を感じると、恐怖を乗り越えるために悪口を言うことがあります。
これは、恐怖に対する反動形成という心理作用です。
反動形成とは、許容できない衝動や思考が抑えられ、無意識のうちに、意識や行動では正反対のものに変わる現象を指します。
未練の断ち切り
手に入らないものや失ったものに対して悪口を言うこともあります。
これは、自分がそれを欲しがっている、取り戻したいという無意識の欲求を紛らわせるためです。
イソップ童話の「すっぱいブドウ」も、この反動形成の例として挙げられます。
裏切られた期待の脱価値化
相手に対して高い期待を持ち、それが裏切られたとき、相手を批判する人がいます。
これは心理学で「脱価値化」と呼ばれる反応です。
脱価値化とは、理想化していた全能の期待が満たされないときに、すぐに価値のないものとして見くびることを指します。
相手を脱価値化する理由には、相手への怒りを表現することや、怒りを向けた相手からの報復を避けたいという動機があります。
集団の結束強化
仲間意識を育てるために、不在の人の陰口や秘密を話すことがあります。
過去の研究によると、仲間意識を強化する鍵は、「仲 間とのコミュニケーション」と「グループの優秀さ」の2つに大別されます。
多くのデメリットがあるものの、「自分たち以外」の誰かの悪口を話すことは、「仲間とのコミュニケーション」を促進し、「グループの優秀さ」を確認することにつながり、結果的に仲間意識を高める効果があります。
自己の感情を相手に投影
自分が嫌っている相手を「嫌っている」と自覚せず、相手が自分を嫌っており、攻撃してくるのではないかと恐れることがあります。
また、性的な欲望を感じている異性に対して、相手が自分に情欲を抱いていると思い込み、「誘惑されている」と感じることもあります。
つまり、自分自身の感情を相手に投影して悪口を言う人がいます。
投影とは、自分自身の中にある受け入れがたい不快な感情を、自分以外の他者が持っていると認識することを指します。悪口を言う人が、批判されている行為を実際に行っている場合もあります。
直接的・間接的な利益を目的とする
悪口を巧みに利用すれば、相手の社会的評価を下げることができます。
そのため、他人の社会的評価を下げることで利益を得ようとする動機を持って悪口を言う人もいます。
悪口の内容が真実かどうかを判断するためには、その悪口を言うことで、当事者がどのような利益を得ることができるのかを考慮することが有効です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人々が生きている限り、悪口は避けられないものです。
悪口が組織内である程度の役割を果たすこともありますが、自分が置かれている立場や状況に応じて、悪口を言う人に同調する必要がある場合もあるでしょう。
それにもかかわらず、悪口を言うことには多くの弊害が伴います。
他人の悪口を言う機会や、悪口の流れに巻き込まれたときには、この記事で紹介した心理学的な知識を思い出して、最善の選択をしてください。
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