うつ病の人との接し方: 無理なくサポートするためのポイント

うつ病は現代社会において深刻な精神的な病気の一つです。

1996年には患者数が43万人だったのが、2011年には104万人に増加しました。

日本の患者数は世界的には比較的少ないものの、欧米と異なり精神科への通院が一般的でないため、実際の患者数は表面化しにくいのが現状です。

そのため、通院していない潜在的な患者も多いと考えられます。

重症化すると、自殺や自傷行為に至る可能性もあるため、軽視は禁物です。

ここでは、うつ病の人と接する際に気を付けるべき10の重要なポイントを紹介します。

うつ病の原因と症状について

うつ病の原因には多くの説があり、仕事のストレスや家庭内の問題、大きなストレス変化などが考えられます。

トラウマやPTSDも一因とされ、大きな失敗や成功体験の欠如も関連しています。

症状は人によって異なり、軽度の場合には気分の落ち込み、倦怠感、偏頭痛、腹痛、食欲不振、不眠、疲労感などが見られます。

重症化すると、強い死にたいという気持ちが現れることがあります。

しかし、これらの症状は他の疾患やストレスとも関連があるため、うつ病だと気づくのが難しいことがあります。

軽度の症状でも、周囲の接し方によっては悪化することがあります。

うつ病が社会問題である一方で、経験がない人には「甘え」と見なされることもあります。

このような誤解や理解不足から、治療が遅れるケースも多いのです。

最悪の場合、起き上がることすら困難になることがあるため、深刻な疾患であることを理解し、適切に対応する必要があります。

うつ病についての理解を深める

うつ病は一律に同じ症状が現れるわけではなく、他の精神疾患と異なり、自分自身で気づかなければ診断が難しい病気です。

病院に行っても、自己申告がないと診断がつかないことが多いです。

そのため、周囲から「本当にうつ病なのか?」と疑われることもあります。

また、通院しても薬がすぐに合うわけではなく、逆に不安感やイライラを引き起こすこともあります。

そのため、薬の変更が必要になることが多いです。

こうした過程で、周囲の誤った対応が症状を悪化させることもあります。

うつ病は投薬だけでは完全に治らず、悪化すると自律神経失調症やパニック障害など、他の精神疾患を引き起こす可能性もあります。

正しい理解を持ち、適切な接し方を心がけましょう。

うつ病になりやすい性格の特徴

うつ病に対して「甘え病」や「ガマンが足りない」といった批判が寄せられることがありますが、実際にはうつ病になりやすい人は全く異なる性格的特徴を持っています。

具体的には、「責任感が強い」「考え深い」「神経質」「自己に厳しい」「真面目」といった特性が見られることが多いです。

すべてのうつ病患者に当てはまるわけではありませんが、統計的にはこうした傾向が強いとされています。

こうした性格の人が「甘え病」といった批判を受けると、さらに努力しようとしてしまい、その結果としてうつ病が悪化することもあります。

「頑張れ」や「応援している」とは言わない

うつ病の人に対する接し方でよく見られる誤りの一つが、「頑張れ」や「応援しているよ」といった励ましの言葉です。

うつ病は、すでに頑張りすぎている結果として現れることが多いため、こうした励ましの言葉は逆効果になることがあります。

これらの言葉をかけることで、「もっと頑張らなければならない」と感じてしまうことがあるのです。

うつ病は、場合によっては入院して集中治療が必要なほどの深刻な状態です。

日常生活に支障をきたし、仕事ができない人も多いため、応援の言葉が逆に焦りや不安を引き起こすことがあります。

うつ病を理解しつつも「うつ病」とは言わない

うつ病の人は、自分が周囲に迷惑をかけていることに対して大きな責任感と苦痛を感じています。

身体的な疾患とは異なり、原因や治療方法、回復の見込みなどが不確かで、その苦しみは計り知れません。

多くの人が陥りがちな誤りは、「うつ病だから仕方ない」といった言葉をかけることです。

うつ病の人は、病気であることを理解してもらいたいと考えている一方で、「うつ病だから」という言葉には敏感です。

この言葉が、病気を理由にすべてから除外されるように感じさせ、逆に症状を悪化させることがあります。

うつ病の状態は日々変動する

うつ病の症状は日ごとに大きく変動することがあります。

ある日は完全に寝込んでしまうこともあれば、少し動ける日や比較的元気な日もあります。

また、一日の中でも感情が激しく変わることがあります。

このような変動を理解せずに「今日は元気そうだね」や「今日は明るいね」と言うと、うつ病の人は自分の感情がコロコロ変わることで周囲に迷惑をかけていると感じることがあります。

うつ病にかかっても、その人の本来の性格は変わらないため、責任感が強いと感じると、自分を厳しく責めることになります。

褒め言葉が逆効果になることがある

うつ病の人は心の中に防御壁を作っているため、基本的に悪意や不快感を引き起こす言葉にしか反応しないことが多いです。

「あなたが必要だ」「助けてほしい」「優秀だから」といった表面的な褒め言葉にはほとんど反応せず、むしろそのような言葉が上辺だけのものであると感じ、軽んじられていると受け取ることがあります。

そのため、こうした対応はうつ病の人に対して適切ではなく、かえって誤解を招くことがあります。

周囲の人が責任を感じるべきではない

うつ病の人への対応でよくある誤りの一つが、周囲が過度に責任を感じることです。

「自分のせいでうつ病になった」「もっと早く気づけたはず」と考えると、うつ病の人の負担がさらに増すことがあります。

実際には、うつ病の原因が周囲の人のせいであることはほとんどなく、原因は複数の要因が絡み合っているため、一つの理由に限定されることはありません。

周囲が気づかなかったことを責めることには、特にメリットはないのです。

否定的な言葉を避ける

うつ病の人との接し方で重要なのは、否定的な言葉を避けることです。

うつ病の人は既に自己否定的な考えを持っていることが多く、自己評価が低いため、否定的な発言を受けると症状がさらに悪化する可能性があります。

うつ病の人は常に自己否定をしており、自分を信じることができれば症状が軽減する可能性がありますが、その信頼を築くのは簡単ではありません。

無理に会話を引き出さない

うつ病の人は、自分の内面に閉じこもりがちです。

病気のことを一時的に忘れる瞬間があるのは、決して悪いことではありません。

そのため、軽い世間話をすることは、うつ病の人に対して効果的な対応と言えます。

ただし、多くの人が犯しがちな誤りは、会話をしたくない時に無理に話を引き出そうとすることです。

基本的には、短い会話を試みた後に反応が鈍い場合は、それ以上の会話を続けることが負担になる可能性があります。

うつ病の状態は日々異なるため、天気や最近のニュースなどの軽い話題を提供しながら反応を見守りましょう。

まとめ

今回の記事はいかがでしたでしょうか?

うつ病の人との接し方についてのポイントを紹介しました。

うつ病は回復が難しい病気であり、最近では特定の環境や状況でのみ発症する「新型うつ病」も見受けられます。

明確な治療法が確立されていないため、周囲の理解が治療において重要な役割を果たします。

薬物療法、休息、良好な人間関係、原因の除去が整わないと、治療が効果を上げず、症状が悪化する可能性もあります。

ここでのアドバイスを参考に、うつ病の改善に少しでも貢献できるように努めてください。